| 「伊勢湾流域圏の自然共生型環境管理技術開発」は,平成 18 年度科学技術振興調整費「国際競争力があり持続的発展ができる国の実現」を目指す「重点課題解決型研究 2-2 持続可能な流域圏管理技術の開発」に,名古屋大学を中核として国土技術政策総合研究所,土木研究所,国立環境研究所,農村工学研究所,水産工学研究所,養殖研究所が連携して応募,採択されたものである.
都市を含む流域圏の環境劣化とそれに伴う,都市・流域圏の疲弊状況を修復・再生するシナリオの中で.これまでの高エネルギー投入型を自然共生型にどれくらい移行できるかその実行可能性を探ることに力点が置かれている.分水嶺で囲まれる流域圏は,水循環の陸域側の単位で,水循環を駆動力として流砂系,物質循環系,生態系が成立していることに着目し,これらの相互作用を軸とし,かつ生態系を流域圏環境の「鏡」としてみるスタンスを取っている.伊勢湾流域圏では,都市,生産緑地,自然域が適度に分布し,流域圏の環境負荷もこうしたさまざまなエリアに起因している.流域圏研究はこれまで東京湾流域圏で蓄積されてきたが,東京湾への負荷が 80 %近くに及び,また先に述べた,水循環,流砂系,物質循環系,生態系もそれらの自律的相互作用として修復するのが極めて難しく,個々の系を分離しながらそれぞれに目を配る方式をとるしかなく,高エネルギー負荷型に依存せざるを得ない.今回,伊勢湾を舞台に,自然共生型を目指す水循環から生態系にいたる総合系の相互作用の修復をにらんだ環境管理技術は,わが国だけでなく東アジア,東南アジアの多くの流域への応用展開も期待される.流域を含むさまざまな利用形態に応じた所掌官庁に関わる研究所の連携もこうした研究で欠かせないが,今回は,大学や学会がその核として真の意味での連携のためのリーダーシップをとることとした.
研究は, 5 つのサブテーマから構成される(図 1 参照).まずサブテーマ(1)では,自然共生型流域圏管理の実現性をにらんだシナリオ提示のほか,他のサブテーマの駆動,それらの成果のビジョンへの統合などをはかる核である.サブテーマ(2)では,(1)で提示される社会シナリオを施策群の集合として具体化し,その戦略比較を受け持つ.本研究の「鍵」となるものに「生態系サービス」への着眼がある.高エネルギー投入を代替するもので,「鏡」とした生態系を,そのサービス( Ecosystem Service )として可能な限り定量化することが重要と考えている.この部分をサブテーマ(3)が担う.生態系サービスが期待できるように、今日疲弊した流域の「鏡」としての生態系の修復が必要となるが,ここでは,生態系のさまざまな側面を支援する流域の中のさまざまな景観要素の生態的機能( Ecological function )を評価するという手法をとっている.この部分を陸域・海域に区分し,サブテーマ(4),(5)を配置した.
図1 自然共生型流域圏研究の枠組み
|